まさかここまで。
あるお宅の月命日。
深刻な顔で葬式をしてほしいとの申し出があった。
事情をよくよく聞いてみると、
実の弟さんが亡くなって、すでに家族のみによる火葬が住んでいるのだという。
弟さんが亡くなったことは知らされていたが、来てくれなくてもよいと連絡が
あったのだという。
葬儀を行ったのかどうか、法名もないそうで、兄として耐えられない気持であると
おっしゃったのです。
妻も子供もあって、一体どういうことだと。
癌で亡くなられたそうなのですが、曰くこれは夫の「遺言でした」。とのこと。
また「町ではみんなこんな感じで行うのが普通だ」と言われた言うのです。しかし、
本当に兄弟にも来てもらわなくてもよいなどと弟が言ったのか信じられないという。
特別兄弟は険悪な中でもなく、むしろ親密に付き合っていた家族同士であったという。
これはいわゆる「直葬」と言われるものなのだろうが、人間の最期がこんなものでよいとは
思えないのだがいかがなものだろうか。
かたちはどうであれ兄弟の縁も切られたようなあり方には、私も信じられない
気がしてならない。
近年家族葬、家族葬と近隣との縁を切るような葬儀が流行りで主流になって
きてはいるが、この流れのどん詰まりのかたちがこれなのかと寒気がしてしまう。
「死んだら終わり」と本人も家族も考えて生きてきたのだろうか、そして生きているのだろうか。
これが人間が築き上げてきた豊かで幸せな社会のありようなのだろうか。
今月の初旬に亡くなられたそうなので、今月内に葬儀をするということになった。
法名もなく遺骨も火葬されたままで、何もないのだそうだ。
何もないけど、せめてお経だけでも読んでいただきたいとのことでした。
弟がかわいそうで、かわいそうでの兄の思いが心にしみました。
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